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刺繍とは その歴史
刺繍はご存知のように、布や皮生地の上も糸を通し、縫い方によって装飾を施す技法のことです。刺繍の歴史は古く、古代エジプト時代の死者を葬る備品の中に、刺繍が施された布が発見されているほどです。
糸を使って布に模様を作るアイデアは、人類史の当初から構築されつつあったことが分かります。この古代エジプトの時代には、すでに刺繍の技法が数多く生み出されており、アラベスク模様や幾何学模様なども発見されているようです。
古代バビロニア人の文化でも刺繍は考え出されており、バビロニア独特の刺繍模様として知られています。その後ギリシアやローマの統治を経て、宮廷や王宮の華美な装飾として根付いていくことになります。
中世の時代には、宗教が世界的な文化や言論の中心を担っていた背景もあり、宗教関連の装飾や利用も多数確認されています。
刺繍の発展
刺繍は特にローマで発展を遂げ、現在に至るような華美な装飾の基礎が出来たとも言われています。ローマ時代には、外国を征服して帰ってきた際にパレードが行われる習慣が強く根付いていました。
その凱旋帰国では、紫に染めたシルクや羊毛に金色の糸で縁取りを施した外衣が使用され、英雄の帰国を讃えていたことが知られています。
そういった特別な衣装には糸による刺繍のみならず、宝石や貴金属なども縫い付けられていたことが分かっています。刺繍は、国の発展や文化の象徴として大きな役割を担っていました。しかし、刺繍がより複雑な発展を遂げたのは、中東やアジアの国々においてでした。
それらの国々では、刺繍は縁取りだけでなく、丸やひし形、幾何学的な模様や複雑なパターン、鷲やライオンなどを描くことさえされていました。
今では、それらの刺繍はアジアンでエスニックな模様という扱いを受けるものであり、世界の模様の基礎ともなった刺繍なのです。
縫い方「ステッチ」
ステッチ(stitch 英語ではスティッチ)とは、刺繍における縫い方や縫い目のことを指します。刺繍は糸を操り、縫い方一つで模様を編み出していくため、どのようなステッチを駆使するかが刺繍を形作ります。
基本は、十字に交差させてバツ模様を作っていく「クロス・ステッチ」、通常の刺して縫う「ランニング・ステッチ」、いわゆる返し縫いで、進行方向とは逆に帰っては進む「バック・ステッチ」などがあります。
これらが刺繍の縫い方そのものであり、種類はそれほど多くはありません。世界中で見られる刺繍は、基本的なステッチを高度に駆使したものなのです。